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Bogner Ecstasy Redが最強過ぎて僕の歪みエフェクター探しの旅が異世界転生太郎した件

ギタリストならば誰もが抱くであろう、憧れのアンプサウンドを、いつでもどこでも鳴らしたいという願望。
BognerのEcstacyは、その中でも羨望の座に位置するアンプヘッドであることは間違いない。

幸いなことに、自分は過去に一度、Bogner Ecstacy Headを試奏する機会があった。
果実のように澄み切ったクリーン。マーシャルの鼻の詰まったサウンドに点鼻薬でも打ち込んだかのようなギラギラのオーバードライブ。
そして荒々しさの臨界突破へと踏み込むハイゲインステージ…。
正直情報量が多過ぎて、その時にはEcstacy Headの真価を出し切ることは到底叶わなかったし、
同時に自分のギタリストとしての稚拙な腕に、軽く絶望さえした。

ただ、そんな高級アンプヘッドをスパーンと買えるのは、ごく限られた人間に許された特権であり、
ましてや「どこでも」という条件が加わると、そんな特権階級でもハードルが上がる。

そんなBognerが、2012年のNAMMに衝撃的なプロダクトの発表をした。
あのEcstacyのサウンドを封じ込めたエフェクターが2種類発売されたのだ。
モデリングでもプロファイリングでもない。純度100%、Bognerの血統を持ち得ることが許されたプロダクトだ。
ただその頃には、僕の音楽活動は心が離れつつある時期にあった。
その理由については前回、お話した通りだ。


あれから紆余曲折して、再びギターのある生活をリスタートするに至った訳だが、
その際、バンドの方向性と合わせて、足元のエフェクターボードのシステムも1からリビルドすることにした。
歪みペダルは、その中でもサウンドの核となる存在。一切の妥協は許されない。
但し10年前、数々の歪みペダルを買っては取り換え、買っては取り換えを繰り返し、
それこそ口にするのも憚れるような、膨大な金を注ぎ込んだ痛い傷口もある。
できれば今後買い替えなくてもいいような、「最初から最強なエフェクター」であることが求められる。
そう、もはやこれはなろう系歪みペダル探しの旅、異世界転生モノなのである。

結局、辿り着いた答えは最初から見えていた。

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筋肉本舗、ハイズドーン。選ばれたのはBogner Ecstasy Redでした。

Ecstasy Redと言えど、発売から7年近く経過している。
当然、自分がギターから離れていた期間の間にも、世には新製品のエフェクターが出回り続ける。
今回選出にあたって、以下の条件と、それらを踏まえて何種類か候補となったエフェクターを幾つか試奏した。

■条件
①ローゲインからハイゲインまで汎用性がある(バッキングからリードまで担当するため)
②JC対策として使える/もしくは単体でアンプライクなサウンドを持っている
③エフェクターボードにのスペースを占有しないコンパクトサイズ
④見た目がかっこいい(←これ重要!)

候補①:Crews maniac sound G.O.D.(Genious Over Drive)

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正直、CrewsのG.O.D.はかなり好きなエフエクターだった。
惜しくも廃盤になってしまい、試奏時には初期の渋いデザインの筐体から変更された限定カラーのゴールドしか残っていなかったが、
こいつをザクザク歪ませて弾くと最高に気持ちいい。
ブティックペダルにありがちな、お上品でお高く止まった系のサウンドではなく、
もっちりしつつもギャリギャリに歪ませることができ、反応性も申し分ない。
ギター側のボリュームをコントロールすれば、完全なクリーンからエクストリームドライブまで多種多様。
本当に今後生産されないのが惜しいペダルだった。
欠点を挙げるとすれば、筐体が予想以上にゴツかったこと。
それとAとBの2つのゲインチャンネルを持ちながら、ボリュームはそれぞれ固定されてしまうのが、もうあと一歩届かなかった点だろうか。


候補②:FREE THE TONE QUAD ARROW DISTORTION
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実は一時期ギターから離れる際、最後にペダルボードに収まっていたのが、FREE THE TONEのQUAD ARROW DISTORTIONだった。
こちらも現在は生産完了品で、ただでさえ生産数が少ない中で、流通分を残した在庫しか残っていない。
今回、改めてもう一度試奏して感じたこと。
FREE THE TONEのエフェクター全般に共通してそうな感覚だが、出音は結構フラットだ。
その中でも、QUAD ARROW DISTORTIONは「明るいディストーション」のイメージとしては最適解かもしれない。
EQの効きは十分だが、極端なセッティングにしてもサウンドの芯が破綻することがないあたりが、
さすが世界に誇る稀代のサウンドテック、林幸宏氏のなせるチューニングだ。
それ故にアンプとのマッチングが大事になってくるし、裏を返せばアンプをかなり選ぶエフェクターだ。
QUAD ARROW DISTORTIONの最大の魅力は、アンサンブルで活きてくる。音がビシーッとバンドサウンドの中から抜けてくるのだ。
きちんとメンテナンスされたコンディションのいいアンプだと、気持ちのいいハイミッドが抜けてくる。
ゲインの幅も広く、ワイドレンジという言葉が実に似合う。
選ばれなかった理由としては、やはり一緒に使うアンプに気を遣うところだろうか。
とは言え、偉大なディストーションペダルであることに偽りはなく、ハマれば本当に気持ちいいのことだけは保証したい。


候補③:Suhr Riot Reloaded

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近年、ブティック系の優等生ディストーションペダルと言えば必ず名前が挙がるであろう、SuhrのRiot。
Reloaded版は通常のRiotに更にゲインをプラスしたバージョン。
繋げてみて成る程、これはまさに優秀。ノイズも少ないしゲインも十分。
ズンズンザクザクするようなメタル系の音には向かないけど、どのセッティング位置でも基本的にハズレがない。
ボイシングのスイッチを真ん中にした時のセッティングが、モダンハイゲイン~~~!って感じで最高。
何よりサイズがコンパクトだし、紫の鏡面仕上げな筐体がカッコいい!

でもこのRiotね、エフェクターでめっちゃ歪ませてます~ 感が半端ねぇんスよ。
アンプライクか?、って聞かれたら「????」みたいな感じ。
聴感上、Riotのサウンドってプレゼンスとベースのてっぺんと底辺あたりがバッサリと削られており、
不要な帯域を故意になくして、ミドル方面にギュッと凝縮してすっきりとした印象にしている疑惑がある。
これ、言い方が悪いけどBOSSのドライブペダルを通した時と同じなんだよね。よくも悪くもエフェクター的と言うか。
ただスタジオセッションにエフエクター1つで殴り込みをかけるとなったら、間違いなくこいつの出番はありそうな気がする。
というか、通常版を持ってる人こそこのReloadedが買いなのでは。


候補④:Leqtique 9/9

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上述のRiot Reloadedのついでに一緒に試奏した、Leqtique 9/9。個人的にはこっちの方が見っけもん。
Leqtiqueについてはその昔、知り合いからMaestroを借りて使ったことがあったが、
「すっごいお上品なオーバードライブだけど何故か自分の肌に合わない」的な印象だったので、
その後お世話になることはなかった(多分世に溢れ捲っているTS系の1つだったのが原因)。
で、数年越しにLeqtiqueを試したわけですが、これがまぁすごい。
実売価格2万円を切るエフェクターとは思えない程に、キメ細かく重たいディストーションサウンド。
ドライブを絞ればきちんとハリのあるクリーンになり、全開にするともうズンズンザクザク。
Riotより守備範囲は広いし、ノイズも少ないし、マーブル柄の筐体がブティック~~~~って雰囲気で優勝です。
唯一、中域を立たせたような図太いドライブサウンドなら、他に優秀な候補があるってぐらい。
あとミドルカットのツマミが筐体の裏蓋を開けた内部にあり、アクセス性の悪さが弱点。
でもこれ、めちゃくちゃいい。余裕があったら1台欲しいエフェクター筆頭。


■結論:Bogner Ecstasy Redの何が最強なのか

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①サウンドの守備範囲がダンチ
本機の最も得意とするところは、Ecstacyのレッドチャンネル――
いわゆる、マーシャル系のギラついたハイゲインサウンドが真骨頂となる。
細かいミニトグルスイッチに困惑しそうだが、難しいことはない。
スイッチは全部右に倒せばハイゲインになる(筋肉論破)。
電圧が下がった状態を再現するvariacスイッチだけは、オンにするとコンプレッションが鬼のように掛かってボリュームが下がるので、
これだけは基本的にオフにしてる人も多いのでは。

で、残るmodeとpre eqで音のハリを決めたら、structureで最終的なキャラ付けを行う。
EQツマミは3バンド、これもとてつもなくよく効く。もはやエフェクターというよりはプリアンプに近い。
70~80年代のオールドロックオーバードライブからモダンハイゲインまで、即アクセス。
そのサウンドは基本的にキメ細かくも、適度にゴリッとして荒々しく、倍音でグシャッと潰れずに芯を残す。
さすがに実売価格50万円相当のベースとなったアンプヘッドの音と比べると酷だが、
確かにBognerらしさは感じるし、ギター本体の味も活かせる、作り物感のない生々しい音が最高だ。
9V DC駆動だが内部で18Vに昇圧していたり、オペアンプではなくディスクリート回路なあたりも、
ワイドレンジでリアルな音に感じる要因だろう。

②使い勝手のいいブーストチャンネル
個人的に、2ch仕様のドライブペダルは可能性が広まるので昔からよく愛用してきたが、
Ecstacy Redも例外なく使いやすい。これがあるのとないのとでは大違いだ。
このブーストチャンネルの優秀な点は、ゲインだけでなくボリュームもきちんと操作できるところと、
エフェクトoff時にブーストチャンネル単体で使えるところだろう。
ブーストチャンネルのボリュームとゲインツマミは小さく、やや回し辛いのが欠点だが、
オン時にツマミごと光るのは見た目にもかっこいい。
ゲインを絞れば、Ecstacy Redのブーストチャンネルで他のドライブペダルをブーストする、
なんて離れ業もできてしまうわけだ。
最近、価格を抑えた1ch仕様のEcstacy Redが出たが、どうせ買うなら2ch仕様だ。

③多機能すぎるのにコンパクト。値段も納得。
これだけ機能を集約しながらも、操作性を損なうことなくコンパクトな筐体に収めている点も素晴らしい。
ヘビーデューティーな外観も耐久性がありそうだし、赤いボディは目を惹く高級感。
フットスイッチもカーリング製で、踏み込んだ時の感覚が気持ちいい。
それでいて、決して価格が高すぎないという点も美点。
これで5~6万円だったらちょっと買うのは躊躇したけど、実売価格は3万円前後。投資する価値あり。


■ここがダメだよEcstacy Red

①ノイズはそこそこ出る
最早これはハイゲインペダルの宿命。
同系統のエフェクターにしては少ない方だけど、こういうものだと割り切るしかない。

②ブーストスイッチON時に「バツンッ!」とボップサウンドが出る
これも機械式スイッチの宿命。トゥルーバイパス式のスイッチによくあるボップサウンドは、
その特性上切っても切り離せない。そもそも、大音量の環境下だとそこまで気にならないけど。

③サウンドの反応性は他機種に譲る
ピッキングニュアンスの追従性とか速度感みたいなものは、決して悪くないけど他モデルにもっと優秀なものがある。
それこそ候補に挙げたFREE THE TONEのQUAD ARROWなんかは、めちゃくちゃスピード感がある。
(ニュアンス反応爆速系を体感しているので、余計に感じるだけかもしれない)


条件と機能性とサウンド。異世界転生を漏れなく満たしたのはBogner Ecstacy Redというお話でした。
発表から7年という時間が経過したものの、他に選んだ候補が同時代系の物が多かったりと、
自分の好みがその時代で止まってただけのような気がしないでもないけれど。
「余計に買い足さなくて済む!」と考えれば、Ecstacy Redは本当に心強い。
泣く子も黙るBognerサウンドが足元にフィーチャーされているだけで、
今日もギターはゴキゲンな蝶になるわけです。

by alter-berber | 2019-07-27 20:54